アリスは都会で迷子になった。
恋に落ちて、子供を身篭り、

どこかへ消えたうさぎのことさえ

憎みきれないきれいな心で、

たった一人で母親になった。
時は夏、竹下通り、恋の煙が目に染みて、

いつからかどこにも帰れない。

死んでしまいたい日がめぐる。

死んでしまいたい日がめぐる。

私たちは、彼女の悲しみのために、

深夜三時、本当の真っ暗闇を探しに行った。
たった一人の悲しみのために死を

オーダーメイドすることが、

ファンタジーに成せる、

最後の優しさであるようで。
懐中電灯で照らされた側から

沢蟹たちがにげてゆく。
人生というものの理不尽さから

逃げきれない肉体を抱え、海へゆく。
沈みゆく彼女の、この世の誰に捧げるにも

釣り合わない美しすぎる肢体を見ながら、
もう二度と、”Don’ t hurt my heart.”
どうか彼女を、わたしたちを、

これ以上傷つけないで。と、うたう。